Email Bookmark and Share

自然災害について子どもに話す

by パティー・ウィフラー (荒尾 日南子訳)

最近起こった日本での地震、津波と、誘発された放射能の危険性は親に大きな難題をつきつけています。被災地の人々の生活はどうなっているんだろう、自分が同じような立場になったら家族をどう守ろうかなどと思いをめぐらし、私たちだれもが感情をゆり動かされました。毎日人間の苦しむ姿を映像で目のあたりにします。こんなとき親はどうすべきしょう?どんな風に説明したら、子どもを守り育むことができるのでしょうか?このような困難な時期にどうしたら子どもと自分自身を大切にできるか、私の考えを以下に記します。

初めに、子どものいないところで大人同士が話し合い、自分の気もちや反応を処理する時間をもつ必要があります。私たち大人というものは現在の様々なできごとに対して気もちを抱えていて、無力感におそわれやすいものです。そのため、たいていの場合、まず第一にすべきは、自分にとって何が、そして誰がいちばん大切なのか思い出すことです。

私たちは子どものころ、世界は当然やさしくて安全で正しいところだろうと思っていました。時間をゆっくりかければ、家族への思いや安全と正義を求める願いから、状況にふさわしい人間らしい反応が起こり、安心感が危うくなっていることに目を向ければ、涙がでたり、震えがくることもあるでしょう。話を聞いてくれる人に自分の気もちを打ち明け、気もちがあふれるままに聞いてもらう必要があります。相手と時間をわけて互いの話を聞き合えれば、この大惨事のために私たちが抱えることになってしまった心の負担と向き合うこともできます。心の深いところで感じている感情を体験することで、ふたたび人間に本来備わっている力が発揮できるにようになるのです。私たちは希望と活力がいつでもすぐに感じられるようにしておく必要があります。そうすれば家庭やコミュニティーで、世界を正しい場所にするために自分にできる限りのことを実践できるようになるからです。

子どもにとって、私たちが他の人を大切に思い、困難な時に人々との連帯感を感じている姿を見ることは大切なことです。けれど、子どもだけが大人の感情を向ける唯一の存在であってはいけません。もし、子どもの前で気もちがわき上がってきたら、それを正直に見せるのはいいでしょう。でも、その気もちについて細かな説明はしないことです。「ニュースで聞いたことで悲しくなったの。」と言えばいいですし「悲しみを外に出すためにしばらく泣く必要があるのよ。」とつけ加えてもいいでしょう。

幼い子どもにとって、大災害の一部始終を知らされるのはいいことではありません。人間の苦しみを見せられても処理できないのです。生々しい新聞の写真やテレビの映像、またはニュースキャスターの解説にさらされると、とてもこわい思いをしかねません。以下に、処理しきれない情報から小さい子どもを守る方法をいくつか挙げます。

子どもをメディアから守りましょう。テレビの報道や、新聞の写真、ラジオの解説などを見せると、大人が安心に思えないこと、手には負えないことが起きている、または他の人を信用できないようなできごとが起きているという印象を子どもにあたえる可能性があります。ニュースは、子どもが寝た後や通勤の車の中でに聞 くようにしましょう。あなたが苦労して築いた家庭内のつながりや愛情が報道によって損なわれないように。

いまこの瞬間に集中しましょう。一緒にいることのすばらしさに注目し、いつもの日常生活を送りましょう。

大災害について、おおまかに子どもに分かる言葉で説明しましょう。たとえば、地震と大きな波でたくさんの人が傷ついたので、いろいろな気もちを抱えている大人がたくさんいるんだよ、という風に。さらに、あなたにもいろいろな気もちがあって、他の人にそれを聞いてもらって毎日をよく生きていこうとしている、と説明するといいでしょう。

安心していい、とはっきりと伝えましょう。テレビで生々しい映像を見たり大人の緊張した会話を聞いた子どもには、子どもが安全だということ、いつもあなたが安全に守ってあげることを伝え、耳にしたニュースについては、あなたができるかぎりの対応をしているということをはっきり伝える必要があります。

もし子どもにどうしてこのような惨事が起きたのか聞かれたら、子どもの年齢と経験に合わせた答えを考えましょう。ときどき地球は伸びたり曲がったりする必要があり、大人はみんなが安全でいられるように力を尽くしているけれど、まだ大人にも分からないことがたくさんあることを認めましょう。大人もこの災害から学んでいること、大人にも悲しんだり泣いたりする時間をとる必要があること、他の人に自分の気もちを聞いてもらう時間をもてば、問題解決できる力がわくようになることなどを説明してあげましょう。何千人もの人が協力していること、被災地には救援の手がさしのべられていることも教えてあげましょう。

しかし結局のところ、災害は子どもの理解をこえるものです。ですから、「正しい」説明をしようとがんばりすぎないでください。事実をあれこれ並べたところで、突然起こる大惨事は理解のしようがありません。むしろ、小さな子どもは、なぜまわりの大人が反応しているのか教えてもらう必要がありますし、大人はいまは沈み込んでいるけれど、あなたの世話はちゃんとしてあげると話してもらう必要があります。危険はここまでやってこないよ、という安心の言葉はなんどでも子どもにかけてあげる必要があります。

もし、子どもが、声の調子や言葉、目にした映像などでこわい思いをしたとしたら、そう口では言わなくても、なにか別の方法でこわかったことを伝えてくるでしょう。たとえば、夜中に目が覚めて泣くかもしれませんし、晩ごはんの最中にあなたの膝にどうしても座りたいとダダをこねたり、今日はきたい靴が見つからないと言ってかんしゃくを起こすかもしれません。こんなとき、子どもは、大人に耳を傾けてもらう必要があります。子どもが感情をつよく感じている最中は、大人にぴったりとそばに寄り添ってもらい、大丈夫だと安心させてもらう必要があります。おだやかな口調で「晩ごはんのあとだったらお膝にきてもいいよ。約束するよ。」と言えば、子どもはあなたからの安心感が心の底に届くまで、泣いたり、もがいたりして、恐怖心や緊張感をほぐそうとするでしょう。「靴だったらもう片方きっと見つかるよ。でも、いまはどこにあるか分からないの。」と言ってあげていいのです。そんな言葉をきっかけに、子どもは心配な気もちを外に吐き出します。 子どもはこのような小さいことで感情を爆発させる必要があり、この小さな爆発は心の中にたまっていた感情のふたを開ける「缶切り」の役目を果たしています。子どもはだいたい、安心できる夕食時や寝る時間などの家族団らんの時間、または朝の学校や保育園に行く前などの手一杯な時間を選んで、感情を爆発させ、たまっていたいやな気もちをとり除こうとし、そうすることで自分は安全なのだとふたたび思えるようになります。

子どもに耳を傾けるとき、このような感情の表現がしばらく続くことを覚悟してください。温かく深い愛情を注いでもらえばもらうほど、子どもはいっそう激しく感情をあらわします。これは、ごく普通で、健康的なことであり、あなたが安心感をあたえていることの証です。子どもの感情発露の原因になっているだろうと思われる惨事については何も触れないでください。なぜ感情的になっているのか分析しようとしたり、なぜ泣いているのか子どもに説明させようとすると、 子どもの感情をほぐすプロセスがぱったり止まってしまうことがあります。むしろ、子どもを感情的にさせた小さいできごとの方に注意を向ける方がうまくいくでしょう。そのできごとが感情爆発のきっかけとしては子どもにとってちょうど扱いやすい大きさだったのです。小さい集団である家族でさえ、全員が力を合わせてやっていくためには、お互いの愛情、はたらき、そして誠実に関わりつづけることがどんなに必要か、私たち親は身にしみて知っています。

親として修練しているこの技量は、まさに人間社会を個人レベルから癒していくために必要な技量です。私たちは耳を傾けることで互いに近づくことができます。耳を傾け、大惨事に際して起きた深い感情を表現できる相手を見つけることで、私たちは自分のもつ思いやりに気づき、感情をときほぐし、家庭の中でも外でも愛情にもとづいた行動がとれるようになるのです。

 

 


Like this article?

  • Keep the information flowing: donate to Hand in Hand
  • Reposting: please share the link to this article with other parents and caregivers